Abstract : |
[緒言] 炎症の問題はVirchow以来病理学上の基本問題であり, 病理形態学的には殆んど研究しつくされて来た. すなわち病理形態学的な立場からのみ従来眺められていた炎症の概念は, 近年酵素化学, 副腎下垂体系内分泌機能研究の進歩, 血管透過性因子, その他の炎症因子の発見, 及び炎症性反応の成立する結合組織の基礎物質の究明等により, 炎症は化学の場面において, その生態を動的に把握しようとする機運に向つたといえよう. Lewis1)は既に1924年, 炎症に際しみられる局所毛細管透過性亢進は, ヒスタミン様物質の作用によるものであろうと述べた. その後Menkinは1936年以降, 犬のテレピン油肋膜炎滲出液より結晶性化学物質を抽取し, これらの化学物質が炎症に際し, 病理組織学的変化を起す主要なる因子をなすものであり, これ等の化学物質を炎症因子2)3)と名付けた. すなわちMenkinによれば炎症因子とは, 炎症の局所に見出される外来性または内因性のある化学物質であつて, 炎症の惹起, ないし進展に主導的な役割を演ずるものであつて障害された炎症局所の細胞が産生する化学物質である. |