Abstract : |
「緒言」肺切除に際し, たまたま隣接肺区域や肺葉を支配する肺動脈もしくは気管支を損傷または結紮した場合, その支配下の肺に虚脱がおこる事が知られている. 一方重症の気管支拡張症, 肺結核のある場合, 肺門部で気管支動脈が著明に拡張しているのをしばしば認める. この気管支血管系の変化は特に肺血管に荒廃を来す慢性疾患で著明に発達する1)2)と云われているが, その機能に関しては多くの研究3-9)がなされているにもかゝわらず, 今尚不明な点が多い. 肺動脈結紮或は気管支結紮により生じた無効換気, 無効血流の増大が肺循環に及ぼす影響, 更にこの場合気管支血管系が如何なる態度をとるかを明らかにする目的で, 私は肺動脈結紮及び気管支結紮による二種類の実験的無気肺を作り, 長期にわたりその心肺動態を追求した結果二三の知見をえたのでここに報告する. 「実験方法」実験動物には10~20kgの成犬の雄30頭を使用し, 手術的に左肺動脈を結紮したP群と左上中葉気管支を結紮したB群に, 右心カテーテル法を利用し, 術前, 術後1ヵ月及び2ヵ月の3点で心肺動態を追求したあと剖検し, 結紮肺等の状態を観察した. |