Abstract : |
「第1章 緒言」1937年Gibbon57)ははじめて人工心肺の研究に着手し, 1953年その臨床応用に成功した58). 1955年以後はLillehei82), Kirklin76)らによつて多数の手術成功例が報告され, 人工心肺の研究は急速な普及と発展とをみるようになつた. 本邦では, 1951年故戸田教授の研究204)にはじまり, その後, 実験的追試, 基礎的研究が次第に各方面で行なわれるようになり, 1956年曲直部ら175), 榊原184)らにより初めて臨床成功例をえ, 以後引続き多数の研究者たちによつて秀れた成績が報告されるようになつた196). そして現今, 内外多数の心臓外科医は人工心肺を武器として直視下心臓内手術を行ない, まことに輝かしい成果をあげている197). とくに最近, 装置の改良, 体外循環技術の向上と, 体外循環の病態生理のより適確な把握とが, 手術手技の向上とあいまつて, 各種心疾患に対する手術適応を著しく拡大させている事実は174), 人工心肺が本来の目的に対してその真価を遺憾なく発揮しつつある事実を示すものであり, また, この分野における過去10年間の急激な発展の跡を物語るものでもある. |