Abstract : |
第1編において適正冠潅流定量のための冠潅流モデル作成について述べた. すなわち, イヌ摘出心左冠動脈潅流法による非負荷拍動心, 細動心の冠潅流実験モデルである. このモデルを使って以下の実験を行った. 1)非負荷拍動心, 細動心の常温における適正冠潅流量の定量を行い, その評価は心筋収縮波型の分析(心筋収縮波高値と収縮様式)および病理組織学的所見を中心に検討したところ, 非負荷拍動心, 細動心ともに心筋1gあたり0.5ml/minが至適冠潅流量であることがわかった. 2)冠潅流量を心筋1gあたり0.1から1.3ml/min. の間で変化させたときの左前下行枝内圧および冠潅流圧(冠潅流回路側圧-回路抵抗)との関係を内径1mmと2mmの冠潅流カニューレについて検討したところ, 内径2mmのカニューラ使用のときには, 冠血管内圧(左前下行枝内圧)および冠潅流圧ともに冠潅流量との間に直線関係がみられたのに対して, 内径1mmのカニューラを使用した場合には冠潅流量と冠潅流圧との間に非負荷拍動心, 細動心ともに何らの相関々係を示さないことがわかった. この原因についてシミュレーションモデルを使って分析を試みた. 3)臨床における冠潅流法の実技につき検討した. すなわち, 独立した冠潅流用ポンプを使用することなく体潅流ポンプの動力源を利用する方法で, 体潅流用動脈送血回路の側枝から冠潅流血を導き心筋重量, 心筋温から求めた至適冠潅流量をスクリュークランプの調節によって定量したのち, これをY字管にて左右冠動脈に潅流するものである. 臨床例につき本法の利点と限界について検討し, Y字管効果を簡単なシミュレーション回路によって検索した. |