Abstract : |
52歳の女性の気管にみられた粘表皮癌に対して, 気管環状分節切除を行った経験について報告し, わが国における同種の症例についても文献的考察を加えた. 腫瘍の摘除にあたっては, 術中に気管支ファイバースコープを用いて気管の内外から腫瘍の局在部位を正確に把握し, 手術操作を進めた. 気管の腫瘍を含めて2.5cmの長さに環状切除を行い, 気管の可動性や減張などに配慮しつつ端々吻合を行った. 術後1年を経過した現在, 狭窄や再発の徴候はみられず, 患者は就労している. 「はじめに」気管に発生した病変は換気障害を中心とする重篤な症状を呈し, 直接生死に関連するため, 適切な治療が望まれていたが, 従来気道の再建がきわめて困難とされ, 手術治療はあまり施行されていない状態であった. 近年外科手術手技, 麻酔法, 縫合材料, 術後管理法などの進歩により, この分野での外科的治療が拡大され, 気管修復, 再建が可能となりつつある1). われわれは比較的まれとされる, いわゆる気管腺腫―mucoepidelmoid carcinoma―の1例に対し, 切除, 気管再建を施行, 良い結果をえたので報告する. |