Abstract : |
大動脈弁下部狭窄症にはいろいろな型があるが, その中でも稀な僧帽弁副組織による大動脈弁下部狭窄症の1治験例の報告である. 症例は3歳男児で, 運動時の胸部苦痛と失神発作を訴えて入院した. 諸検査により, 右胸心に合併した限局性の大動脈弁下部狭窄症と診断した. 左室流出路での圧差は100mmHgであった. 手術は体外循環下に, 逆行群群潅流と心外膜局所冷却を併用して行った. 大動脈切開からの手術視野では弁下部の狭窄組織を確認できず, 経心房中隔性に左房切開を加え, 僧帽弁腱索に糸をまわして引き上げることによって確認することができた. 狭窄組織は腱索が附着していて, 収縮期にはパラシュート状に広がり, 弁状作用で左室流出路を狭窄することがわかった. この組織を切除することによって, 左室流出路の圧差は消失した. 僧帽弁副組織による大動脈弁下部狭窄症は本症例も含めて5例の報告があるが, そのうち2例は手術時に狭窄組織を確認できず, 1例は死亡, 他の1例は再手術を受けている. それゆえ, 手術経路としては大動脈切開の他に左室あるいは左房切開が必要であるが, 術後の心機能の面から考えれば左房切開でそれも僧帽弁を切離しない方法が良いと考えられる. |