Abstract : |
食道癌術後肺合併症の対策として重要なことはいかにして気道内分泌物を除去するかにある. 従来の肺合併症対策は比較的消極的な方法が多く, 積極的方法としては気管切開が行われているが, 患者に苦痛を与えしかも確実に喀痰を除去できない点に満足できないところがある方法といえる. その点気管支フアイバースコープによる術後早期からの積極的喀痰吸引療法は患者に苦痛を与えず, 気道内分泌物を確実に除去できることで今までにない極めて有用な食道癌術後肺合併症対策である. 今回, 食道癌切除症例:44例〔治療的施行例:24例, 予防的施行例(麻酔直後):20例〕に本法を施行し, 治療的施行例24例中17例が著効を呈した. すなわち, 17例は本法施行直後より呼吸数, 脈搏数等の臨床症状が改善し, 胸部レ線上の陰影の消失, 血沈ガスのPO2の改善恢復は極めてすみやかであった. 疾患別では, 無気肺例, 限局性気管支肺炎例に著効を認め, 発見が遅れた微慢性気管支肺炎症例では本法による効果は少なかった. すなわち早期に肺状況をチェックし, 早くから本法を施行することが本法により良い治療結果を得るための大切なことである. 術後患者が喀痰貯留により喘鳴を発生する前に, 臨床所見(呼吸数, 脈搏数, 胸部X-P, PO2)にて少しでも分泌物貯留傾向がある場合は本法を積極的に行うことが必要である. また, 術直後の気道内観察を行ったところ, 20例中16例, 80%に喀痰残存が認められ, 特に非開胸側の左主気管支内の貯留が目立った. この事実は術前少しでも喀痰の多い人には, 麻酔直後に気管チューブを介して気道内分泌物を除去する必要性を示唆している. 本法施行による事故は1例もないが, 口腔, 喉頭の麻酔の徹底化と施行中のO2吸入は励行すべき事項である. 本法は今後, 食道癌術後の肺合併症対策としては欠かすことのできないものであることを強調したい. |