Abstract : |
小児期開心術々後の腎機能は成人のそれに比較してやや趣を異にしている. それは年齢的要素とチアノーゼ性心疾患の占める割合のちがいによるものと思われる. とくにチアノーゼ性心疾患の手術成績は心室中隔欠損症のような単純な非チアノーゼ性心疾患に比較して未だ満足な状態ではない. 乳幼児期におけるチアノーゼ性心疾患の手術成績向上のため48例の開心術々後の腎機能を検討し, 以下の所見を得た. (1)チアノーゼ群と非チアノーゼ群における腎機能の比較では, チアノーゼ群が体外循環中の平均流量と第1病日のクレアチニン・クリアランスは有意な相関を示すのに対して, 非チアノーゼ群では両者の間に明らかな相関は認められなかった. 体外循環中の平均流量が80ml/kg/min以下の低流量では, チアノーゼ群の腎機能は非チアノーゼ群に比較してその低下が著しい傾向を示した. また平均流量100ml/kg/min以上の高流量では, 両群ともに腎機能は良好であった. (2)年齢別の腎機能では, 6カ月未満の症例は生理的にも腎機能は未成熟ではあるが, 6ヵ月以上の症例に比較し術後早期のクレアチニン・クリアランスの低下は著しく, また腎機能の回復にも2~3日の経過を必要とした. (3)体外循環に起因した腎不全例は, 48例中3例に認められた. 3例は全例表面冷却, 循環停止を併用した例であった. 乳幼児期のチアノーゼ性心疾患の開心術々後の腎不全を予防するには, 表面冷却に伴う血圧の下降, 循環停止の長時間化, 体外循環中の流量の低下に十分に注意を払う必要があると思われた. |