Abstract : |
前方経路によりsuperior sulcus tumorに対する手術を行った. 皮膚切開は, 1)正中切開による胸骨上2/3の縦断, 2)第4肋間前方開胸, 3)患側半周襟状切開, よりなる. この方法は, 1)視野が極めて広いこと, 1)腫瘍浸潤範囲が明らかなこと, 3)胸廓穹隆部の解剖学的構造が明らかなため, 銀骨下動脈や尺骨神経の処理が安全確実に行いうること, 4)体位を変えずに肺門操作が可能であること, の利点を有する. 欠点としては, 胸壁合併切除操作部位が深部に位置すること, 術後flail chestを発生せしめ易いこと, があげられる. 「まえがき」Superior sulcus tumor6)は, 大血管, 上膊神経叢, 脊椎などへの浸潤のために, 従来, 手術の対象となり難いと考えられてきた. しかしいくつかの施設では, この腫瘍に対する手術が追究され, radiationと合併して施行することにより, 良好な遠隔成績が得られるとするもの1)2)7)がみられる. 一方, 手術療法の適応について批判的なもの3)4)も少なくない. Superior sulcus tumorに対する手術術式としては, Paulsonらの方法がstandardの術式と考えられ8), これに追従するものが多い4)5). すなわち通常の後側方経路で, 切膚切開線は肩部にまで延長し, 後方から胸壁を合併切除する方法である. しかし, このアプローチでは, 腫瘍と鎮骨下動静脈や上膊神経叢などの重要臓器を直視しえない欠点がある. |