Abstract : |
長時間体外循環における静脈還流障害を防止することを目的として雑種成犬を用い, 生体における静脈の流れについて検討を加えるとともに, さらに体外循環時における脱血を, 落差脱血, ローラーポンプ脱血および拍動ポンプ脱血の3種類の脱血方法について5時間の体外循環を行い, 脱血方法が血行動態, 微少循環動態および各臓器の組織学的変化に及ぼす影響について検討を加えた. その結果次の結論を得た. 実験I:生体における静脈の流れに関する研究中心静脈, 門脈, よび末梢静脈のいずれにおいても, 心拍効果に比し, 呼吸効果が明らかに認められたた.また, 自然呼吸下では, 上・下大静脈と門脈の血流におよぼす呼吸効果は全く時相を異にしており, 門脈においてはwater-fall phenomenonとして報告されている所見が認められた. 実験II:各種の脱血方法を用いた体外循環における血行動態の変動拍動ポンプによる脱血法(静脈側拍動流)では, 落差出血法およびローラーポンプ脱血法に比し, 上大静脈, 肝静脈および腎下部下大静脈の血流分画は体外循環5時間にわたり回転前とほとんど不変に経過し, 上・下大静脈分画の逆転はみられなかった. 顕微鏡下に観察した微小循環動態では, 拍動ポンプ脱血法は細小静脈, 毛細血管に呼吸類似効果の血流変動がみられ, 他の2脱血法に比し長時間にわたり微小循環動態は良好に保持された. 各臓器の組織学的検査では, 拍動ポンプ脱血法はとくに肝, 脾の腹部内臓器で他の2脱血法と比較して 変化は非常に軽度であった. 以上の結果より, 静脈側拍動流は静脈還流を長時間にわたり良好に保持でき, organic pooling現象の予防に有効であると考える. |