Abstract : |
稀有なる先天性バルサルバ洞動脈瘤左室内破裂の1治験例について報告する. 症例は25歳男性, 術前にUCGおよび大動脈造影法で本症と診断し, 動脈瘤切除, 閉鎖および大動脈弁置換術を施行した. 本症は現在まで文献上で9例の報告をみているが, その成因, 診断, 予後および外科治療について考察した. 「I. はじめに」バルサルバ洞動脈瘤の大部分は右冠動脈洞動脈瘤が右室内に破裂するが, 著者らは術前にUCGおよび大動脈造影法で診断しえた右冠動脈洞動脈瘤の左室内破裂の稀有なる症例1)に対して外科治療を施行したので若干の文献的考察を加えて報告する. 「II. 症例」患者:25歳, 男性 主訴咳嗽および前胸部圧迫感 現病歴:生来健康であったが, 1975年4月咳嗽, 発熱などの感冒様症状が出現したため某医を受診し, その時初めて心雑音を指摘された. 一時自覚症状は改善したが, 就寝時咳嗽, 前胸部圧迫感が発現し, また胸部X線上で心陰影の拡大を認めたため, 同年8月7日本学第二内科に入院した. 入院後UCGおよび大動脈造影法によりバルサルバ洞動脈瘤の左心室内破裂と診断し, 外科治療の目的で同年9月17日, 当科に転科した. |