アブストラクト(30巻3号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 食道疾患に対する縦隔鏡検査食道癌を中心として
Subtitle : 原著
Authors : 高橋啓泰, 阿部令彦
Authors(kana) :
Organization : 慶応義塾大学医学部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 30
Number : 3
Page : 342-356
Year/Month : 1982 / 3
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 食道癌78例を中心とする食道疾患83例に縦隔鏡検査を施行し, この検査結果を臨床検査所見, 手術所見, 病理組織学的所見と対比検討しつぎの結果を得た. 1. 長いブレードの縦隔鏡を作成して, 食道壁をほぼ全長にわたり直視下に観察し, 癌の外膜浸潤の程度を判定した. 手術所見との一致率は89%であった. 2. 本検査による食道癌の上縦隔リンパ節転移は, 78例中29例, 37%に認められた. 占居部位別にはCe27%, Iu63%, Im46%, Ei24%の転移率であった. 3. 上縦隔のリンパ節転移部位をみると, 気管分岐部に9%あり, 残り91%は気管の左右の縦隔に均等に分布していた. 4. 切除例63例中, 本検査で上縦隔リンパ節転移を認めた症例は21例, 33%であったのに対し, 手術時, 上縦隔にリンパ節転移を認めた症例は8例, 13%に過ぎなかった. この差が転移リンパ節の遺残となると考えられた. 5. 切除例63例のリンパ節転移は, 縦隔鏡所見を加えると, 腹部より胸部に多くみられた. 6. Eiの腹部リンパ節転移陽性例では, 42%と高率に上縦隔リンパ節転移が認められた. 手術術式の選択, 照射野の決定に際し配慮が必要である. 7. 本検査結果をretrospectiveにみて, 食道X線造影, 食道鏡検査で口側辺縁が不明瞭な場合は, 上縦隔リンパ節転移が高率に示唆される. 8. 上縦隔に関しては, 術前照射によって, 遠隔部位からのリンパ節転移が増加するという傾向はみられなかった. 9. 本検査のリンパ節転移陽性例では, 90%が非治癒切除ないしは非切除に終わっていた. これら進行癌症例の生存期間の延長を計るには, 術前より転移状況を正確に把握し, より適切で強力な合併療法を行う必要がある. 10. 縦隔鏡検査は壁外性病変による食道狭窄に, 最も有用な診断法である.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 食道癌, 縦隔鏡検査, 外膜浸潤, 上縦隔リンパ節転移
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