Abstract : |
慢性膿胸に対する外科治療として, 多くの術式が施行されているが, その治癒率はいまだ十分とはいい難い. 著者らは可及的広範囲の肺剥皮と壁側胸膜の骨膜外剥離によって, 死腔の閉鎖を行う一期的膿胸根治術式"近中法"を開発した. 本術式の特徴は, 肋骨切除を行わないので骨性胸郭が温存されることである. また, 骨膜外剥離腔に滲出液が貯溜し壁側胸膜を圧迫したのち, 日時の経過と共にこの滲出液が吸収され, それに伴って癒着した両胸膜が肋骨方向に牽引されて肺膨張を惹起する. 本法における骨膜外剥離腔の二次感染予防策は, 術前にドレーン洗浄療法により, 胸腔内浄化を計ること(結核菌陽性9例中6例が菌陰性化, 3例が菌量減少. 一般細菌陽性15例中7例が菌陰性化, 6例が菌量減少, 2例が不変. )と, 術中に生理食塩水で局所を十分cleansingすること, 感受性抗生物質を使用することである. 術中, 胸腔内容に細菌を検出した臨床例(結核菌陽性7例, 一般細菌陽性10例)において, 生理食塩水4lを用いた骨膜外剥離腔の洗浄後には細菌は検出されず, 術後の局所穿刺液からも細菌は証明されなかった. 本論文においては, 本術式開発途上での問題点を述べ, 術式の詳細を報告するとともに, 臨床応用に際しての問題点について言及した. |