Abstract : |
漏斗胸の変形部(すなわち被矯正部)の変形度を術前に客観的に評価することは, 個々の症例の記録, 手術適応の決定, 矯正効果の判定などに重要である. 漏斗胸の変形にはさまざまの形があり, 陥凹部の深さ, 広さ, 対称度などはそれぞれの症例によりまちまちである. 著者らは, 独自の漏斗胸指数を計測算出し, 陥凹部の容積, 深さ, 広さの三つの面から評価し, それらを総合して変形の重症度を決定しているので報告する. 特にこれらの各指数は胸郭全体に対する比率で表現することにより数値に具体性を持たせ, 同時に算出法も簡便となるようにし, 変形部の形状を客観的に評価し記録できるようにした. 被矯正部の容積指数は, 充填物にて矯正後の胸壁を想定した理想的な胸壁を形成し, その容量を実測し, それと胸郭容積(胸郭を楕円形と仮定して計算する)との比で表す. 深さ指数は, 胸部X線側面像にて矯正後の胸壁を想定し, 陥凹最深部の深さを測定し, それと胸郭前後径との比で表す. 広さ指数は, 陥凹部の広がりを楕円形と仮定し, その長径と短径から面積を算出し, これと前胸壁の体表面積(身長, 体重より体表面積を求め, 一定の係数を乗じて算出する)との比で表した. 以上三つの指数を総合して漏斗胸変形の重症度分類を行った. すなわち, 深さ指数と広さ指数をプロットして作成したノモグラムから該当する領域を決め, これに容積指数を加えて, 軽度変形群, 中等度変形群, 高度変形群, 極度変形群に分類した(広さ, 深さ指数の重症度と, 容積指数の重症度とが一致しない場合は両群の中間群とする). 我々の手術症例を, この変形重症度分類法にて分けると, 軽度変形群15例(19.4%), 中等度変形群49例(63.6%), 高度変形群10例(13.0%), 極度変形群3例(3.9%)となった. これら指数による変形度分類と, 外観上の変形度とよく一致しており, 漏斗胸変 形度の有用な評価法と考える. |