アブストラクト(30巻12号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 133Xeを用いた小児肺機能検査法の開発と乳幼児開心術症例への応用
Subtitle : 原著
Authors : 金田正徳, 草川實
Authors(kana) :
Organization : 三重大学医学部胸部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 30
Number : 12
Page : 1924-1939
Year/Month : 1982 / 12
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 肺高血圧を伴う乳幼児心疾患では肺の気腫性変化や呼吸不全が早期に出現し, また, 根治手術後に重篤な肺合併症を来す頻度も高く, その治療に当たっては手術前に呼吸機能を正しく評価することが大切である. しかし, 現行の肺機能検査は患者の理解と協力があってはじめて行い得る方法が主体であり, 乳幼児に適応できない場合が多い. そのため, 肺循環動態でこれらの症例の重症度を判定する方法が用いられているが, 著者は臨床症状を呼吸不全や気腫性変化の有無に従い3群に分け, また, 肺胞壁の肥厚の程度により生検肺の病理組織学的変化を4度に分けて肺循環動態と比較検討したところ, 必ずしも良好な相関は得られず, これらの症例の病態を術前に診断し, 呼吸管理計画を立てるためには呼吸機能をより正しく評価し得る指標が必要と考えられた. そこで, 133Xeを用いた肺機能検査法を乳幼児にも適応し得るように改良を加え, これらの症例における換気機能の検索を行った. 特に気道の閉塞性病変の程度を数値で評価し得るよう133Xe washout曲線をfast及びslow compartmentに解析し, 換気不良部分を反影するslow compartmentのデータをもとに3つのwashout indexを算出し, 検討を行ったところ, 呼吸不全を認める症例ではwashout indexの増大が著明に認められ, 気道の閉塞性病変が臨床症状を悪化させていることが明らかとなった. 肺組織分類とwashout indexの相関係数をみるとindex 1:0.842, index 2:0.632, index, 3:0.864と良好な相関が得られ, 呼吸不全を来す左右短絡疾患の肺病理変化として重視されている肺胞壁の組織病変の術前診断を可能にすると考えられる. また, 術後呼吸管理日数との相関係数はindex 1:0.686, index 2:0.648, index 3:0.736と良好な相関を示し, このことは気道の閉塞性病変の検出を目的とした全身麻酔下で行う術前検査が呼吸管理に有用であることを示し, 6ヵ月からの乳幼児にも十分適応し得る著者の133Xe小児肺機能検査法の有用性を示唆するものである.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 乳幼児心疾患, 呼吸不全, 閉塞性気道病変, 133Xe washout, 肺胞壁病変
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