アブストラクト(31巻9号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 開心術後の急性腎不全
Subtitle :
Authors : 小林百合雄1), 田中一彦2), 公文啓二2), 内藤泰顕3), 藤田毅3), 曲直部寿夫3)
Authors(kana) :
Organization : 1)済生会下関総合病院心臓血管外科, 2)国立循環器病センターICU, 3)国立循環器病センター心臓血管外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 31
Number : 9
Page : 1390-1396
Year/Month : 1983 / 9
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 開心術症例897例において, 術後の急性腎不全(ARF)の発生率, 体外循環との関係, 原因, 死亡率, 治療の一手段として我々が頻用している腹膜灌流(PD)について, 6カ月未満症例, 6カ月以上15歳未満症例, 15歳以上症例の3群に分類して比較検討した. (1) ARFの発生率は13.6%であり, 6カ月未満症例では最も高率で30.4%, 6カ月以上15歳未満症例では最も低率で2.1%, 15歳以上症例では19.3%であった. (2) 体外循環時間は, 6カ月未満症例では, ARF例平均2時間46分, 非ARF例平均2時間32分と差異を認めなかったが, 6カ月以上15歳未満症例と15歳以上症例では, ともにARF例の方が3時間を越す長時間体外循環であった. また3時間以上の長時間体外循環におけるARFの発生率は30%と高率であった. (3) ARFの原因は, 長時間体外循環と術後に持続する低心拍出量症候群(LOS)が最大の因子であり, その他6カ月未満症例ではショックを契機としてARFに陥ったものが28%もあり, ショックに対する注意がより一層必要な年齢層であると考えられた. (4) ARF例の死亡率は36.9%であり, 6カ月未満症例では71.4%と最も高率で, 6カ月以上15歳未満症例14.3%, 15歳以上症例33.7%であった. 死亡原因としては, LOS 40%, 敗血症35.5%と両者が大半を占め, その他不整脈, 肝不全, 脳出血, 気道出血などの合併症によるものがみられた. (5) ARFの治療としては, LOSの改善に努めることが最も大切であり, またPDが有効であった. PD開始時の指標は, 血清クレアチニン値は, 6カ月未満症例では1.5mg/dl以上, 6カ月以上症例では3.5mg/dl以上であった.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 開心術, 急性腎不全, 体外循環, 腹膜灌流, 低心拍出量症候群
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