アブストラクト(32巻2号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 解離性大動脈瘤に関する実験的研究
Subtitle :
Authors : 武岡哲良
Authors(kana) :
Organization : 北海道大学医学部第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 32
Number : 2
Page : 174-186
Year/Month : 1984 / 2
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 解離性大動脈瘤の実験的研究は, 疾患モデルとして適当なものがほとんどないことからその報告は少ない. そこで雑種成犬を用いてBlanton法又はこれに準じた方法により, 胸部下行大動脈に外科的解離を作り, いわゆるDeBakey III型解離の疾患モデルを作製してその病態と治療について検討した. 解離の進展には高血圧の存在が重要であり, reentryが形成されるには収縮期圧200mmHg以上を必要とした. またnorepinephrine投与によって解離の進展とreentryの形成が促進され, trimethaphan投与によって進展は防止された. 同時に大動脈の圧曲線の分析から解離進展時の血行動態を推定できた. 疾患モデルの予後はreentryの有無と大きさに左右された. すなわち, reentryがないか, あっても小さな例はすべて死亡し, 死因は大部分が腹部主要臓器血管の閉塞障害であった. 一方, 長期生存した例はすべて大きなreentryを有しており, 真腔, 解離腔ともに開存してdouble barreled aortaとなっていた. 解離モデルを用いて行った大動脈造影では瘤化の有無やintimal flapによる線条透亮像は読影できたが, entryやreentryの位置の読影は困難な例が多かった. このため熱希釈法によるreentry部の探索を試み, 一応の成績が得られたが, これを直ちに臨床に応用するにはサーミスターの固定法や指示液のmixingなどの点で問題が残された. 長期生存犬の解離壁の組織像は2ヵ月を過ぎるとErdheimの中膜壊死に似た変化が現われて, 1年後にも変化は持続した. このように外科的解離作製後に中膜壊死に類似した組織像を呈したことから, この場合の中膜壊死は解離性大動脈瘤の前駆病変ではなく, 解離の結果生じた二次的変化と考えられた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 解離性大動脈瘤, 実験的解離モデル, 解離進展因子, 解離モデルの病態, 中膜壊死
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