Abstract : |
冠血行再建術を行うに当たり, より有用な情報を得ることを目的としてリニア式電子走査型超音波断層装置を用いて, 術中の冠動脈並びにバイパスグラフトの観察を試みた. 動物実験において冠動脈主要分枝の内腔の観察と前下行枝に作成した狭窄部の確認が可能であった. 臨床応用は5例の非冠動脈疾患症例と10例の冠動脈バイパス手術症例を対象とした. 左冠動脈主幹部, 前下行枝, 右冠動脈の描出は比較的容易であったが回旋枝では時に十分な観察を行い得ない場合があった. 狭窄像も冠動脈造影と一致する部位で観察し得た. グラフト吻合部の観察を試みた症例において, 大動脈側吻合部は良好に描出し得たが, 冠動脈側吻合部は多くの場合満足できるものではなかった. 冠動脈バイパス術施行症例において, 冠動脈造影から測定した冠動脈内径と, 超音波図をもとに計測した内径とは, 冠動脈健常部並びに狭窄部においてともに有意の相関が得られた. また狭窄度も両者間で有意の相関を示した. 更に術中金属プローブを内腔に挿入して測定したグラフト吻合部近辺の冠動脈内径と超音波図をもとに計測した同部の内径との間にも有意の相関関係が認められた. 本法は簡便, 非侵襲的であり, 繰り返し行うことが可能であり, 手術中に, (1)冠動脈近位部の狭窄病変の観察, (2)グラフト吻合予定部の冠動脈内腔の開存性の確認, (3)心表面から検出が困難な冠動脈主要分枝の探索, (4)グラフト吻合部の形態的評価などが可能となるものと考えられた. 今後の問題点として, 装置の改良による画像の質の向上と, 真の狭窄病変とfalse positiveとの鑑別などが挙げられ, 経験の積み重ねが必要である. |