Abstract : |
1975年から1980年までに当研究所にて開心術の行われた完全大血管転換症(d-TGA)II型25例を対象として高肺血管抵抗群に対する手術適応や術式の選択について, また近年行っているperforated patchによるVSD閉鎖術について検討を行った. これらの症例をVSDを放置したA群5例, perfor-ated patchによるVSD閉鎖を行ったB群7例, VSDを完全に閉鎖したC群14例に分けた(A群の1例は初回手術から2年後更にperforated patchによるVSD閉塞を行った). 平均年齢はA群4歳10ヵ月, B群5歳3ヵ月, C群2歳9ヵ月で, 術前RpはA群20.4±5.6(units・m2), B群14.2±7.2(units・m2), C群8.4±5.3(units・m2)であった. 心房内血流転換術としてはA群はすべてMustard手術を行い, B群ではMustard手術3例, Senning手術4例, C群ではMustard手術10例, Senning手術2例であった. C群の2例でRastelli手術を行った. 手術死亡はA群1例, B群1例, C群2例の4例で高肺血管抵抗を示し根治手術を行えなかったA・B群でも手術成績に差はなかった. また, 生存例にて術直後及び遠隔期のカテーテル検査を行い肺血管抵抗の変化を検討した. A群の3例では肺血流量の上昇によるRpの低下はみられたが肺動脈圧の変化はみられなかった. 一方, B群のわずか1例ではあるが肺動脈圧の低下に伴うRpの著明な低下がみられた. これらの結果からd-TGA II型の高肺血管抵抗群に対する姑息手術としてはperforated patchによるVSD閉鎖がVSDを放置する従来の手術より有利と考え, 今後とも積極的にperforated patchによるVSD閉鎖を行ってゆく方針である. |