Abstract : |
小児期心臓手術の各種感染指標に対する影響とその変遷を検討し, 術後感染症の早期診断に対する各種指標の有用性について検討した. また, 若年ほど未熟性が著しいとされる抗体産生系に手術侵襲が及ぼす影響についても検討を加えた. 対象は1歳未満26例, 1~3歳18例, 4~8歳20例, 9~18歳28例で開心術66例, 非開心術26例であった. 感染指標として発熱, 白血球数, 血液像, 血沈, CRPを術前, 術直後, 第1, 第2・3病日, 第1, 2, 3, 4週に測定した. 1. 術後感染症は11例で, 1歳未満(6例), 9~18歳(4例)に集中してみられた. 心膜炎は9歳以上にのみ3例認められた. 2. 非感染症例における平均発熱期間は, 1歳未満2.6±1.6日, 1~3歳3.5±3.8日, 4~8歳3.5±2.6日, 9~18歳4.9±3.4日であり, 年長児程, 長びく傾向がみられた. 術後早期感染症例ではmean±1SDを越えており, 発熱は感染症を疑う良い指標と思われた. 3. 術後白血球数は著明に増加, その主たる増加は多核球であった. 術後第1~2週に血液像も含め正常値に復帰した. 術後早期(1週)の感染症診断の指標として白血球数, 血液像は術後の変遷にかくれ, 有用ではなかった. 4. 一方, 血沈, CRP値は早期感染症例でも, 術後正常変遷より明らかに高値を示しており, 有用であった. 5. すべての年齢群にて血清γ-グロブリン, 補体値は術当日減少を示すが, 第1週には回復し第3週まで増加を示した. 感染症診断の指標としては有用でなかった. |