Authors : |
藤原慶一, 横田祥夫, 節家直己, 岡本文雄, 清田芳春, 愼野征一郎*, 吉川栄治*, 三宅俊治**, 中本進***, 佐野俊二**** |
Abstract : |
先天性肺動脈弁欠損症候群は, 先天性の肺動脈弁の欠如・心室中隔欠損症(VSD), 肺動脈弁輪部狭窄・動脈瘤状に拡大した肺動脈の合併を特徴とする予後不良の疾患である. 今回, 根治手術を施行した4例(年齢:3ヵ月から5歳10ヵ月)の術前後の血行動態について検討し, 本症候群の外科治療上の問題点につき考察した. 手術は, 体外循環下にVSD閉鎖し, 右室流出路の再建は, 初期の1例で22mm径Hancock valved conduitを用い, 最近の3例ではSJM(A)弁をin situに挿入した. 拡大した肺動脈に対する処置は行わなかった. 4例中手術死亡はなかったが, 術後6ヵ月目に1例を感染症で失った. 乳児期の1例は, 術後も気管支圧迫症状が残存した. 右室収縮期血圧は, 術前106±10mmHg(mean±SD)から術後42±5mmHgへと低下した. 気管支圧迫の指標となる右肺動脈最大容積指数(ml/m2)は50, 52, 76, 74から32, 47, 74へと術後減少したが正常より高値にとどまった. 以上より, 本症候群の外科治療として, VSD閉鎖とin situ肺動脈弁挿入を行い, 気管支圧迫症状の強い乳児例では, 積極的に肺動脈の縫縮術及び吊り上げ術を加える必要がある. 人工弁の選択としてSJM弁が適しているが, 抗凝固療法が困難と考えられる症例では再弁置換を考慮した上で生体弁の使用も考えている. |