Abstract : |
成人ファロー四微症根治手術31症例を対象に, 若年者ファロー四徴症と比較しながら外科治療時の問題点を検討した. 手術成績では, 死亡は3例(9.7%)で, 死因は右室流出路パッチ縫着部からの出血によるタンポナーデ, 左心不全, 術中左室破裂である. 最近15年間では, 死亡は25例中1例(4.0%)で向上がみられる. 成人ファロー四徴症では, 若年者に比べて多血球血症が高度で, 肺血管陰影は増強し, 電気軸は右軸偏位が強く, SV1+RV5はやや低く, 動脈血酸素飽和度は高いなどの特徴があり, 病型では田村のD, D’型がほとんどを占めた. 肺動脈狭窄は, 弁狭窄主体が56.5%と多いが, 漏斗部狭窄も34.8%あり, 両者の共存がほとんどである. 加齢により漏斗部狭窄は増強する傾向にある. 術後血行動態は良好で, 生存例の右室対左室収縮期圧比は0.52で, 若年者に比し低かった. 短絡先行例は8例あり, 内5例は成人期施行例であった. 短絡開存例の術後臨床所見の推移からみて, 根治手術は1~1.5年後が適当と考える. 成人ファロー四徴症で問題となるのは心筋の脆弱性と副血行路の発育であり, それらに対する術前, 術中の配慮が大切である. 年長例では, 脳膿瘍, 心内膜炎, 敗血症などの合併症の危険性も高く, 他組織の二次性病変も加わるので, 早期手術が望ましい. 肺, 腎機能不全, 出血傾向の強い症例では短絡術先行も一考の余地ありと考える. |