Abstract : |
僧帽弁狭窄症を交連切開術(OMC)群10例, 弁置換術(MVR)群9例に分け, 術前後に一貫して動的運動負荷下に心カテーテル検査を行い, 本症の術前心機能, 心予備能の特徴と術後の改善度及び弁機能につき比較検討した. 病悩期間が長く, Sellors病型でもより重症であるMVR群が術前有意な低心拍出状態を呈した. その要因として狭小弁口に由来する機械的左室流入障害のみでなく, 左室拡張末期圧高値に反映された左室コンプライアンスの低下, 左室収縮能の低下, 低左室容量及び両心室高後負荷などの複数の因子が相加的に作用したものと考えられた. 術後は, 弁機能上両群とも有意に弁口は開大されたが, 僧帽弁圧-流量関係からは自己弁, 置換弁ともに狭窄特性を呈した. また, 心機能の面ではMVR群で左室容量負荷に追従できない心予備能の低下が顕著に示され, これは弁性因子のみでは説明されず, 術前から存在する左室局所収縮不全, 低コンプライアンス, 肺血管床の器質的病変, 心房細動など可逆性に乏しい因子が両群間の差を規定するものと考えられた. 以上から, 本症に対する外科治療は, 不可逆性因子の進展が軽く, 心予備能の回復が期待できる可及的早期に行うことが肝要であることが確認された. |