Authors : |
竹内靖夫, 須磨幸蔵, 井上健治, 城間賢二, 小山雄次, 成味純, 西山清敬, 金子秀実, 郡良文, 寺田康 |
Abstract : |
川崎病罹患児11例に, 大動脈冠状動脈バイパス手術を行った. 年齢は5~13歳で, 男子7人, 女子4人であった. 第9症例までは自己大伏在静脈を, 最近の2例は内胸動脈を使用してバイパス手術を行った. 手術成績は全例良好で, 特記すべき合併症もなく, 術後1ヵ月でのグラフト開存率は88%(n=11)であった. 自己大伏在静脈を使用した9例のうち7症例は5~9年の経過が観察され, この間のグラフト開存率は術後2~3年で55%(n=7), 術後5~9年で55%(n=7)であった. 術後1ヵ月から2~3年の間にかなり高率にグラフトの消耗がみられたが, これは移植静脈片の内膜肥厚によるものではないかと思われた. しかし術後2~3年で開存していたグラフトは, 術後5~9年でも開存しており, これは小児の動脈硬化の進展がゆるやかなことも一因ではないかと考えられた. 開存グラフトを有している症例は, この間平均で体重66%, 身長26%の成長を示していたが, 移植静脈片の径, 長さとも成長によるdiscrepancyはなく, 冠状動脈血管床に適合している所見が得られた. 以上より川崎病A-Cバイパスの手術成績は良好であり, 術後早期のグラフト開存率は成人のそれに匹敵した. また移植静脈グラフトで過剰な内膜肥厚を免れたグラフトは, 患児の成長に適応して長期にも開存するのではないかと思われた. 成人で長期開存が良好と報告されている内胸動脈の使用と, 大伏在静脈使用のA-Cバイパスの手術手技の向上により, より高い川崎病バイパスグラフトの遠隔開存率がのぞめるのではないかと考えられた. |