Abstract : |
術中に発生した人工弁機能不全の診断に, 術中心エコー図法が有用であった症例を報告する. 症例は24歳の女性で, 29mm Bjork-Shiley弁を用い, 2-0エチボンド糸のeverting mattress縫合で僧帽弁置換術を行った. 人工弁機能不全の原因は, 人工弁縫合糸断端がディスクと弁輪の間に嵌入し, 人工弁のディスクを閉鎖位に固定していた. 術中心エコー図法を行い, この人工弁機能不全を迅速, 且つ容易に確診し, 患者を救命することができた. 1960年, Harken1), Starrら2)が人工弁置換術に成功して以来, 幾多の人工弁が開発されてきた. その中でも, 良好な弁機能と耐久性, 合併症の少ないこと, 弁高の低いこと(low profile)などを理由として, 傾斜円板弁(tilting disc valve)が代用弁として選択されることが多い. しかし, この種の人工弁には, ディスクと弁輪部との間に小さい間隙が存在し, ここに縫合糸や組織片が嵌頓してディスクの可動性が障害され, 急激に重篤な事態を発生することがある. 傾斜円板弁のこのような人工弁機能不全は, 迅速な診断, 処置が必要とされる. |