アブストラクト(36巻6号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 肺移植における気管支吻合部創傷治癒に関する組織学的研究
Subtitle : 原著
Authors : 藤村重文, 近藤丘, 半田政志, 山内篤, 岡部健, 斉藤亮, 一ノ瀬高志, 白石裕治, 仲田祐
Authors(kana) :
Organization : 東北大学抗酸菌病研究所外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 36
Number : 6
Page : 914-922
Year/Month : 1988 / 6
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 肺移植における移植肺気管支吻合部の創傷治癒を組織学的に検討する目的で, 雑種成犬を用いて自家及び同種肺移植を行った. 剖検時移植肺各吻合部に明らかな狭窄がみられなかったものをとりあげ, 自家肺移植20頭(7日~6年), 同種肺移植65頭(5日~220日), 合計85頭を対象として, 移植肺とともに気管支吻合部のH.E染色, Elastica-Masson染色及びAzan-Mallory染色標本を作成して組織学的検討を行った. その結果, 自家肺移植においては, 気管支吻合部の粘膜癒合は術後1週ごろからみられ, 術後3週ごろでは粘膜面及び外膜での癒合が観察された. 吻合部外膜側に膿瘍形成が存在したものでは, 気管支粘膜の癒合所見はなかった. 同種肺移植においては, 末梢肺の拒絶反応, 気管支吻合部より末梢約0.5cm以内のdonor気管支上皮の障害, 及び同気管支上皮下のリンパ球を主とする単核細胞浸潤の3つのパラメーターを設定して, それぞれ段階分類を行って検討した. その結果, 設定した3つのパラメーター間にはいずれも有意な順位相関がみられ, 同種肺移植の気管支吻合部の創傷治癒には拒絶反応が密接に関与していることが解った. また同種移植後免疫抑制剤を剖検時まで持続的に投与したものの気管支吻合部の障害は, Methotrexate投与群ではAzathioprine投与群よりも軽度であった. 以上の成績から, 気管支吻合に際しては, 手技上断端同志の粘膜を密着させることと, 感染防止が重要であり, 同種肺移植においては拒絶反応が気管支吻合部創傷治癒に密接に関与していることから, 非可逆的な気管支吻合部障害を防止するために拒絶反応の早期診断が是非必要であると考える.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 自家肺移植, 同種肺移植, 気管支吻合部創傷治癒, 拒絶反応, ドナー気管支
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