Abstract : |
教室で手術を施行した僧帽弁狭窄症(MS)手術症例37例につき手術前後の運動負荷に対する左心室の反応性を分析し, その結果を手術後の経時的左室機能の推移, 血行動態の変化及び術中左室心筋生検標本と比較検討し, 以下の結果を得た. 1)正常対象群15例の結果をもとに術前運動負荷時のmVcfの増加率(%△mVcf)が20%以上のものを反応良好群(A群), 以下のものを反応不良群(B群)としたが, 対象37例中9例(24.3%)はB群に属していた. 2)術前MS症例の運動負荷に対する左室の反応性の特長は, 心拍数の増加による左室拡張終期容量及び1回拍出量の低下に起因する左室ポンプ効率の低下にあったが, 手術後の運動負荷時においてはA・B両群ともにこの左室ポンプ効率の低下は消失し, 手術後の運動時左室ポンプ能の改善は両群ともに明らかであった. 3)A群においては手術後早期より左室機能の改善は良好で, 術後遠隔期においては安静・運動負荷時ともにほぼ正常範囲内の左室機能を示したのに対し, B群においては術後僧帽弁機能の回復にもかかわらず, 術後早期においては左室機能はむしろ低下し, また, 術後遠隔期においても術前と同様運動負荷反応は不良で, 同群における左室収縮予備能低下の存在が明らかになった. 4)B群における左室収縮予備能低下の主因は, リウマチ性心筋炎による心筋因子によるものと考えられた. 5)運動負荷エコーは, MS症例における左室収縮予備能の評価に有用であり, 左室収縮予備能低下例においては手術後早期及び遠隔期における管理には厳重な注意が必要である. |