Authors : |
北村道彦, 西平哲郎, 平山克, 河内三郎, 加納正道, 赤石隆, 標葉隆三郎, 関根義人, 実方一典, 森昌造 |
Abstract : |
昭和51年より60年までの過去10年間の胸部食道癌切除例277例を対象とし術後の循環系合併症の発生について検討した. 術後の循環系合併症は114例(41.2%)にみられた. 合併症の内訳では不整脈が最も多く86.8%を占めた. その他に低心拍出量症候群(LOS)8例, 心筋梗塞3例などがみられた. 死亡例は5例あり, 心筋梗塞,心外膜炎, 心タンポナーデ, non-occlusive mesenteric ischemia, 急性心不全の各々1例ずつであった. 合併症の発生時期をみると, 不整脈では第3病日までに発生する例が多く, LOSは8例中7例が術当日ないし第1病日に発生し, 心筋梗塞は3例とも第1病日に発生していた. 循環系合併症の発症には, 呼吸, 循環, ホルモン動態など食道癌術後特有の病態生理が関与しているものと思われる. 合併症の発生に関与する因子についてみると, 高齢者では有意に(p<0.05)発生率が高く, 高血圧の既往を有する例, 術前心電図に異常がみられた例で発生率が高い傾向がみられた. 術式別にみても頸部吻合例では胸腔内吻合例より発生率が有意に(p<0.05)高く, 頸部吻合例のなかでも胸骨後経路の方が後縦隔経路よりも発生率が高い傾向があり, 再建臓器による心臓への直接の影響が合併症の発生に関与していることが示唆された. 肺合併症の発生例では循環系合併症の発生率が有意に(p<0.05)高く, 縫合不全併発例でも発生率が高い傾向があり, 循環系合併症がみられた場合には他の合併症の発生を念頭に入れた注意深い管理が必要である. |