Abstract : |
免疫学的異常のない70歳男性にCABGを施行したところ, 第10病日に発熱・意識障害が出現し, 下痢・全身性紅斑・顆粒球減少を呈し, 第24病日に敗血症・腎不全で死亡した. 皮膚基底細胞の空胞変性・好酸球壊死・Tリンパ球の浸潤, 細胆管上皮の変性, 骨髄の高度低形成, リンパ組織の壊死などの病理組織像から, 輸血後GVHRと診断し得たので若干の文献的考察を加え報告する. 発熱・発疹・白血球減少を主徴とするいわゆる「術後紅皮症」と呼ばれる中には, その臨床経過や病理所見から, 骨髄移植後などに発症する移植片対宿主反応(graft-versus-host reaction, GVHR)と酷似するものがあり, その本態は輸血後GVHRであることが近年明らかにされてきた1). 本症は, 本邦の開心術後に多いことが特徴である. 今回われわれは, CABG後10日目に発熱・意識障害をもって発症し, 全身性紅斑・顆粒球減少を呈し, 敗血症・腎不全にて死亡した例について, 皮膚生検像からGVHRと診断し得たが, 更に剖検所見と併せ, 組織学的所見を中心に検討し, 若干の文献的考察を加えて報告する. |