アブストラクト(38巻1号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 補助循環(LVAD)施行中の免疫能の変動
Subtitle : 原著
Authors : 岡林均, 広瀬光, 荻野均, 神野君夫, 花田正治, 西村和修, 平田和男, 野本慎一, 岡本好史, 伴敏彦
Authors(kana) :
Organization : 京都大学医学部心臓血管外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 38
Number : 1
Page : 10-15
Year/Month : 1990 / 1
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 重症心不全に対する補助人工心臓(VAD)を用いた治療法は有効な治療手段としての地位を確立しつつある. それに伴いVAD施行中の管理上の問題点の一つとして感染対策が重要となってきた. 従って生体防御機構としての免疫能の変動を知ることは非常に有意義なものと思われる. われわれは開心術後, 補助人工心臓を装着した2症例を対象とし, 術後白血球数, 好中球数, リンパ球数, T細胞百分率, B細胞百分率, OKT4/8比, リンパ球幼若化試験(PHA), フィブロネクチン血中濃度, 補体成分血中濃度(C3, C4, CH50), 免疫グロブリン血中濃度(IgA, IgM, IgG)を測定した. 2症例とも術後一過性の補体成分の低下を示したが, LVAD装着後7日目には正常値まで回復した. 補体成分の低下はVAD使用のためではなく, むしろ体外循環の影響と思われた. 免疫グロブリンでは有意な減少はみられなかった. リンパ球は術後著明に減少したが, 約1週間で回復した. 同時にT細胞の減少もみられた. OKT4/8比は症例1では最初高値を示し, その後次第に減少した. 症例2では終始低値を示した. リンパ球幼若化試験はリンパ球数が, 正常値まで回復した時点でも抑制された状態が持続していた. このような変動は通常の体外循環後にみられる変動と同じであり, VADに特徴的と思われる変動は認められなかったことから, VAD使用は免疫能に大きな変動はもたらさないものと思われた. 従ってVAD施行中は創部管理を厳密に行えば, 感染は十分に克服できるものと考えられる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 補助心臓, 免疫能, 体外循環, 開心術, 感染
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