Abstract : |
1978年3月から1990年3月までに25例の孤立性大動脈弁閉鎖不全に対し, 機械弁を用いて大動脈弁置換術を施行した. 術前後に, NYHA心機能分類, 心エコー図を用いて心機能の経時的変化を観察した. 術後の平均観察期間は55±30ヵ月であった. 術前の心エコー図により, 左室収縮末期径(LVDs)>50mm且つfractional shortening(FS)<25%の症例13例を重症群, 他を軽症群として比較した. NYHA分類では, 両群とも術前はIII°あるいはIV°の症例が多いが, 術後1年で全例NYHA I°あるいはII°に改善し, 術前後のNYHA分類では両群間に有意差はなかった. 心エコー図上での心機能は, 左室拡張末期径(LVDd), LVDs, FS, ejection fraction(EF)いずれも, 重症群においては, 術前に比べ, 術後1年, 術後3年と経時的に改善がみられ, 術後3年でそれぞれ正常化し, 以後同様の状態が継続した. 一方軽症群では, 術後1年でLVDd, LVDsの改善がみられ, この時点でFS, EFを含め, すべて正常化した. 以上より重症群では術後の心機能回復が長期化するものの術後3年では正常化し, 軽症群では, 術後1年で正常化することが判明した. これにより, LVDs>50mm, 且つFS<25%の状態になる以前こ外科治療することが, 術後早期の心機能回復のためには必要なことが示唆された. |