Abstract : |
開心術中の虚血後再灌流障害に対するウリナスタチンの有用性について検討した. 対象は全25例(冠動脈疾患18例, 弁膜症7例)であり, 大動脈遮断解除直前に大動脈基部よりウリナスタチンを10,000IU/kg投与したU(+)群(n=12)(冠動脈疾患9例, 弁膜症3例), 非投与群のU(-)群(n=13)(冠動脈疾患9例, 弁膜症4例)の2群に分類した. 年齢, 体重, 体外循環時間及び大動脈遮断時間は両群間に有意差はなかった. ウリナスタチン投与は顆粒球エラスターゼ値には影響を及ぼさず, また心筋逸脱酵素及び心筋の好気性代謝の有無についても両群間で有意差を認めなかった. しかし, 大動脈遮断直前の値をコントロール値とし, 1とした時の冠静脈血中の脂質過酸化物質のthiobarbituric acid(TBA)値は大動脈遮断解除直後, 1時間後, 3時間後にそれぞれU(+)群;0.94±0.13, 0.86±0.09, 0.83±0.19, U(-)群;1.31±0.35, 1.11±0.24, 1.07±0.28と各時点でU(+)群は有意に低値を示した(p<0.05). 一方, 抗酸化剤α-tocopherol(α-TOC)はU(+)群;1.07±0.16, 1.08±0.17, 1.06±0.18, U(-)群;0.90±0.14, 0.83±0.16, 0.80±0.12と各時点でU(+)群は有意に高値を示した(p<0.05). 従って, 虚血後再灌流時にウリナスタチンはTBAの増加とα-TOCの消費を有意に抑制し, 本剤のラジカル消去能による虚血後再灌流障害に対する有用性が示唆された. |