Abstract : |
1981年から88年末までに当施設で癌性胸膜炎合併の非小細胞性肺癌に対して全胸膜肺剔除術を行った12例を対象として, その手術適応について検討した. 全胸膜肺剔除術症例の累積生存率は1年生存率52%, 3年生存率26%で中間生存期間は13カ月であった. 同時期の癌性胸膜炎合併非小細胞性肺癌症例に対し, 開胸タルク散布による胸膜癒着術を11例に, また, チューブドレナージによる胸水制御療法を18例に施行し, 前者の1年生存率は9%, 中間生存期間7カ月で後者の1年生存率は11%, 中間生存期間6カ月であった. 全胸膜肺剔除術例は他の2群に比し予後良好の傾向にあったが統計学的有意差は認められなかった. 全胸膜肺剔除術例を播種は認めるが, ほとんど, 胸水のない播種型(5例)と, 明らかに胸水を認め胸膜肥厚の見られる胸水型(7例)に分けその予後を検討すると, 播種型の3年生存率は50%中間生存期間は14カ月で, 術後51カ月, 45カ月の2例の長期生存例が得られた. 胸水型の予後は極めて悪く1年生存を得られず中間生存期間は, 4カ月であった. 両者間に統計学的有意の差(p<0.05)をもって播種型例が予後良好であった. これらの結果より, 全胸膜肺剔除術は癌性胸膜炎でも播種型で分布広範なものに限り手術適応が考えられた. 播種型例では胸水はほとんどなく, 胸水型症例は全例播種病変を伴っていたことより, 播種型の予後が良いのは癌性胸膜炎でも早期の状態であるためと考えた. |