アブストラクト(41巻4号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 超低体温循環停止下の持続的逆行性脳灌流法の脳保護効果
Subtitle : 原著
Authors : 上田裕一, 三木成仁, 大北裕, 田畑隆文, 酒井哲郎, 松山克彦
Authors(kana) :
Organization : 天理よろづ相談所病院心臓血管外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 41
Number : 4
Page : 559-568
Year/Month : 1993 / 4
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 1987年から1992年6月までに当院で, 超低体温循環停止(DHCA)下の持続的逆行性脳灌流法(CRCP)を用いて, 大動脈弓修復あるいは人工血管による再建を施行した15例を対象として, その脳保護効果について, CRCP中の血液データ, 術後の覚醒及び抜管時期などをもとに検討した. DHCAとし, 酸素加した血液を体外循環回路の送血-脱血ラインのバイパスを介して逆行性に上大静脈へ, 内頸静脈圧20mmHgに維持した持続的灌流を行い, 大動脈弓への還流血は吸引して, 病変に応じた弓部再建を行った. 最低鼻咽頭温は平均17.7±2.6℃, DHCA+CRCP時間は11~78(37.3±21)分で, CRCP量は200~750ml/minであった. CRCP中に得られた逆行性送血と大動脈弓内への還流血のPo2, So2, O2 content, Pco2, CO2 contentは, 有意差(p<0.001)を示し, 平均の酸素含有量較差は4.9±2.3mlO2/dlで, 酸素供給と二酸化炭素の排除, すなわち好気的代謝の維持を示唆するものであった. 病院死亡を2例に認めたが, 術前の肝不全, 多発梗塞に起因するもので, CRCPが原因ではなかった. 麻酔からの覚醒は, 前述の2例と術前ショックの3例を除く10例中9例が翌朝までに, 残る1例も術後2日には人工呼吸器から離脱できた. 今回の脳保護効果に注目した検討では, 酸素加血の逆行性灌流による好気的代謝の維持, 脳の低温の維持による代謝の抑制, 更に代謝産物の排除がなされると考えられた. 従って, 循環停止単独に比して脳保護の上で有効であり, 許容時間の延長も期待でき, 本法は大動脈弓再建術の有力な補助手段となる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 持続的逆行性脳灌流法, 超低体温循環停止, 弓部大動脈瘤, 脳保護
このページの一番上へ