Abstract : |
両側開胸下による胸部食道癌根治術が呼吸循環動態に及ぼす影響を検討するため, 雑種成犬18頭を用い, 右肋間開胸による胸部食道癌根治術モデルと, 右肋間開胸に左肋間開胸を付加した両側開胸による胸部食道癌根治術モデルのII群を作成し, 術後3日目の呼吸循環動態諸量変化について比較検討したところ, 次の結果を得た. 1)右開胸群と比較して両側開胸群では呼吸動態諸量のうちPao2, A-aDo2, Respiratory Indexが有意差を持って悪化していた. 2)循環動態変化については, 両群共に左心機能低下と右心負荷に対する右心機能亢進が認められたが, 両群間に有意差はみられなかった. 3)術中出血量は, 両側開胸群が有意に高値を示したが, 膠質液, 晶質液を主体とした十分な輸液により循環動態に及ぼす影響は少なかった. 4)術後3日目の胸腔内貯溜液を両群で比較すると, 両側開胸群が右開胸群に比べて有意な高値を示した. 5)気管粘膜変化に差は見られなかったが, 肺の病理学的検査において両側開胸群の左葉無気肺の程度が強く認められた. 以上より, 両側開胸群は右開胸群に比較して, リンパ節郭清や手術操作による肺の機械的圧迫範囲が広く, また術後の胸腔内貯溜液量が多いことから, これらに起因して発生する無気肺の程度も強く, Pao2やA-aDo2が一層悪化したものと考えられた. |