Abstract : |
冠状動脈の近位部における三枝完全閉塞症例について検討した. 当院で行われた冠状動脈造影約4,100例中, 同様症例は4例(0.1%)に認められ, いずれに対しても冠状動脈バイパス術を施行した. 保有する冠危険因子数は平均2.3のみであったが, 労作性狭心症の病歴は4~29年(平均16.3年)と長期であり, 陳旧性心筋梗塞の既往は全例に認められ, 最多は4回であった. 3例(75%)に真性大動脈瘤の合併がみられ, 1例はLeriche症候群をも呈していた. 冠状動脈造影では右冠状動脈, 左前下行枝, 左回旋枝それぞれseg.1, 6又は7, 11で完全閉塞していた. 全例に冠状動脈内側副血行路及び冠状動脈間側副血行路がみられ, 4例, 計12枝の閉塞冠状動脈中11枝の末梢側が造影されたが, それらの描出の程度は様々であった. 全例CCS分類IV度であり, 3枝ないし4枝のバイパス術の施行により臨床症状の著明な改善が得られた. 冠状動脈三枝完全閉塞症例においては, 心筋viabilityなどの心機能あるいは閉塞部の末梢側血管の評価などが術前に十分行いえないことが多い. 今回の検討からは3~4枝のバイパス術はその治療成績が良好であったことから, 今後の同様症例に対する治療指針として意味を持つものであると考えられた. |