Abstract : |
経皮経大動脈弁的に左室内に挿入し流量補助を行う脱血カニューラと, 下行大動脈内の大動脈バルーンとをあわせもつカテーテル(ICAC;Integrated cardioassist catheter)を開発した. 本カテーテルによって左室より脱血された血液は, 遠心ポンプを介して動脈に返血され, 大動脈内バルーンによるcounterpulsationをあわせもつ左心バイパスが可能となる. 雑種成犬で左冠状動脈前下行枝結紮による虚血心筋を作成し, コントロール(C)群, 非拍動流左心バイパス(LVB)群, 拍動流左心バイパス(ICAC)群間で装置駆動中の血行動態を比較した. 更に, 虚血作成後4時間装置の駆動を行い犠牲死させた後, 2, 3, 5-triphenyltetrazolium chlorideを用いた心筋染色法にて, 虚血心筋の梗塞範囲縮小効果を検討した. 虚血作成1時間後のICAC群のTension time indexはC群と比較して, 有意に低値であり, DPTI/TTI比はICAC群でC群, LVB群より有意に高値であったが, LVB群とC群との間に差はなかった. 冠状動脈結紮後の虚血領域(C群17.3±9.5, LVB群16.4±3.4, ICAC群16.9±5.2%)は各群で同様であったが, 虚血領域における梗塞範囲(C群61.9±12.2, LVB群57.7±3.9, ICAC群16.8±6.0%)はICAC群で有意に縮小された. 冠状動脈結紮後の心室細動出現率は, ICAC群で少ない傾向であった. 今回の検討から, 部分左心バイパスにcounterpulsationを付加することは有用であり, 心筋梗塞急性期の梗塞領域の縮小効果をもたらすことが示唆された. (日本胸部外科学会雑誌1994;42:1154-1162) |