Abstract : |
TC199溶液によ新鮮同種血管の保存効果及び移植免疫反応について考察を加えた. 実験モデルは, Wister-Kingラットの胸部大動脈を摘出し, TC199溶液(4℃)にて1, 2, 3週間保存した(各10). 保存血管は, 腹部大動脈に端側吻合にてブリッジ様に移植し, 両吻合部間の自己血管を結紮した. レシピエントは同系Wister-kingラット(Auto群)と異系Lewsラット(Allo群)を用い, 移植後血管開存率及び免疫反応について検討した. また, 移植2週間後に血管を摘出し, 組織学的検討を施行した. 移植血管の開存率はAuto群では1, 2週間保存10%, 3週間保存80%であり, Allo群では1週間保存100%, 2週間保存80%, 3週間保存0%とAllo群において保存期間の延長に伴う開存率の低下が示唆された. 組織学的検討ではAuto群では, 3週間保存後の移植血管において線維芽細胞の核の融解, 内皮細胞の破壊を認めた. Allo群における組織所見はAuto群に比して早期に増悪傾向を示し, 2週間以上の保存群において線維芽細胞, 内皮細胞の消失を伴う広範な血管構造の崩壊を示した. 免疫蛍光抗体染色では, Allo群においてIgG, IgM, C3補体の沈着を認め, 保存期間の延長に伴う組織崩壊部への浸潤が認められた. 以上の所見からTC199溶液による新鮮同種血管保存は, ラット大動脈において2週間未満で可能であると考えられた. (日本胸部外科学会雑誌1994;42:1171-1177) |