Abstract : |
最近10年間にIABPを使用した成人開心術症例94例についてその開始時期を術前(pre)・術中(peri)・術後(post)に分け, それぞれの術前左室機能, 駆動日数, 手術死亡, 使用理由などについて検討を加えた. 術前左室機能の指標は左室駆出率(LVEF)・左室収縮末期容積係数(LVESVI)・左室拡張末期容積係数(LVEDVI)を用いた. 結果はそれぞれpre・peri・postの順に:LVEF:40±16.9, 55.3±13, 59.9±11.1%. LVESVI:83.5±44.3, 50.8±32.8, 51.3±44.2ml/m2. LVEDVI:218.1±102.1, 96.5±49.1, 122.9±82.4ml/mといずれの指標においてもpre群は他群に比較して有意に(p<0.05)機能低下を示した. しかし, 駆動日数, 手術死亡においては各群間に有意差は認めなかったものの, 手術死亡率(pre13.3%, peri22.2%, post20%)ではpre群で少ない傾向を示した. また, 術中・術後の使用理由を検討した結果ではperi群は術前からの心不全, 術中梗塞, 体外循環の複数回使用, 180分以上の大動脈遮断などがあげられ, post群は術後出血, 心筋保護の不備, 術中梗塞, 残存肺高血圧などであった. これらの結果, 今後, 手術成績向上のためには手術手技の改善ばかりでなく, IABPの予防的使用の拡大及び最近われわれが用いている包括的心機能の指標であるP-V loopの術中計測による適応基準作りが重要であると考えられた. (日本胸部外科学会雑誌1994;42:1296-1301) |