Abstract : |
脳分離体外循環法の成績は安定してきているが, 分枝送血法, 左鎖骨下動脈送血の有無については, 脳塞栓や脳灌流不全の一因となり得るにもかかわらず一定の見解は無い. 超音波検査と血管造影による弓部分枝病変の確認, 経頭蓋骨ドプラー法による側副血行の確認, 術中3分枝すべての灌流圧モニターに基づくわれわれの方法と成績を報告する. 対象は1992年4月から1993年12月までに脳分離体外循環を用いて弓部再建を行った連続22例で, 動脈硬化性動脈瘤14例, 大動脈解離8例であった. 脳灌流条件はα-stat管理下, 最低食道温平均17.9℃, 流量平均13.1ml/kg/分, 最低左浅側頭動脈圧平均51mmHg, 分離灌流時間平均134分であった. 分枝送血法は分枝に直接カニューラを挿入することを基本としたが, 解離病変を有した例では3例で大動脈内腔よりバルーンカテーテルを挿入, 1例では分枝に端々吻合したグラフトから, 粥腫病変を有した1例では病変部位より遠位側に端々吻合したグラフトから送血した. 左鎖骨下動脈も原則として送血したが, 椎骨動脈が右優位であった2例と, 左右同等で左橈骨動脈圧が左浅側頭動脈圧の50%以上であった4例(1例は術前経頭蓋骨ドプラー法にて左後交通動脈の開存が確認された)では省略した. 手術死亡を2例(9.1%)認めたが, 神経系後遺症は術前より意識障害を認めた急性解離2例のみであった. 脳分離体外循環に際しては超音波検査等による弓部分枝病変の確認が重要である. 術中は3分枝すべての圧モニターを行い, 脳内に均等な血流分布が得られるよう原則として左鎖骨下動脈送血を行うべきである. (日本胸部外科学会雑誌1994;42:1858-1864) |