Abstract : |
開心術における虚血心筋再灌流障害を予防する目的で, 活性酸素産生系の1つであるxanthine oxidase系に着目し, その抑制因子allopurinol(Ap)の術前投与を行いその効果を臨床的に検討した. 対象は成人開心術症例20例で, 術前にApを予防投与した群(Ap群)10例と, 投与しなかったControl群(C群)10例に分けた. Ap群には, 腎機能に応じてAp100~300mg/日を術直前の7日間投与した. 体外循環開始前, 大動脈遮断解除後5分, 15分, 体外循環離脱後5分の計4回冠静脈洞血を採取し, xanthine-oxidase系の中間代謝産物hypoxanthine(HX), xanthine(XA), uric acid(UA)と, 乳酸, ピルビン酸, CK, CK-MBなどを測定し両群間で比較検討した. 冠静脈洞血中HX濃度は体外循環開始前は両群で差が無く大動脈遮断解除後の各時点で有意にAp群が高値を示した. 冠静脈洞血中XA濃度はすべての時点で有意にAp群が高値を示した. 冠静脈洞血中UA濃度はすべての時点で有意にAp群が低値を示した. 乳酸値, ピルビン酸値, CK, CK-MB値は両群間で有意差はなかった. 以上よりApの予防投与が再灌流初期におけるxanthine oxidase系の反応速度を抑制して中間代謝産物であるHX, XAを蓄積させ, 最終産物であるUAの増加を抑制したと考えられた. よってApの予防投与がxanthine oxidase系由来の活性酸素産生を抑制することが推測された. (日本胸部外科学会雑誌1995;43:26-31) |