Abstract : |
1987年から1994年2月まで当教室で施行されたStanford A型解離性大動脈瘤手術症例は73例で, うち急性期手術42例, 慢性期手術31例であった. エントリーを含めた人工血管置換術を基本的な手術方針としてきたため, エントリー位置は術式や補助手段の決定に重要なものとなっている. 従って, 今回エントリー部位別に術式, 補助手段及び術後成績について, 検討を行った. 急性期手術例で上行, 弓部, 及び下行大動脈にエントリーの存在した症例はそれぞれ52%, 33%, 14%で, 慢性期手術では同様に52%, 32%, 16%であった. 急性期手術では上行, 弓部エントリーともに上行又は近位部分弓部置換が多いのに対して, 慢性期手術では拡大術式をとり, 完全弓部置換がそれぞれ3例と6例に行われ, その内4例にBentall手術が同時施行された. 下行エントリーでは, 急性期手術で上行置換と完全弓部置換が同数であったのに対して, 慢性期では主に完全弓部置換が行われ, その全例に二期的胸腹部置換のためのelephant trunk法が用いられた. 補助手段として最近は, 鎖骨下動脈送血による脳分離灌流を当初から準備することにより, エントリーが上行, 弓部, 下行のどの位置であっても, 容易に動脈切開を上行から弓部に進めて, エントリー部の人工血管置換術が可能となっている. これにより, 体外循環及び脳分離灌流時間, 更に術後合併症発生率に, エントリー部位別による差はなく, ほぼ満足できる結果を得ている. (日本胸部外科学会雑誌1995;43:306-312) |