Abstract : |
近年, 再冠状動脈バイパス術症例は増加傾向にある. 再手術は, 通常前回の手術創と同じ胸骨正中切開により行われるのが一般的であるが, 胸骨と心筋の癒着や開存グラフトの存在など問題も多い. これらの問題を回避する手段として左開胸アプローチによる再手術があり, 欧米においては幾つかの報告があるが本邦での報告例は少ない. われわれは過去2年間に12例に左開胸アプローチによる再冠状動脈バイパス術を施行した. 年齢は39~75歳で男性10例, 女性2例であった. 左開胸法を選択した理由は, 3回目のCABGであること(3例), 上行大動脈の石灰化病変(7例), 複数の開存グラフトの存在(5例)であった. 手術は左第4または第5肋間後側方開胸で行い, conduitには左内胸動脈・free graftとした右胃大網動脈・大伏在静脈を用いた. 体外循環には原則として大腿動静脈からの送脱血による人工心肺を使用したが, 1例で体外循環を用いずに心拍動下に手術を行った. 重大な合併症は認めず全例生存しており, また術後早期のグラフト開存は良好であった. 再冠状動脈バイパス手術を行う際, 左開胸アプローチ法は選択しうる有用な術式と考えられた. (日本胸部外科学会雑誌1995;43:1120-1125) |