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新しく開発された被覆人工血管CL301について, エンドトキシン（ET）による発熱, 被覆材の吸収特性, 器質化への影響などを動物埋め込み実験から基礎的に検討し, 胸部大動脈手術での有用性を検討した. CL301は有孔度150及び50mlのwoven Dacron（WD）を基材とし, 高濃度のグルタールアルデヒドで十分架橋されたゼラチン（GL）被覆人工血管で, 有孔度1ml, 保湿剤（グリセリン）の添加により柔軟で易縫合性が高い. エンドスペシー法によるET含有量は5.3±0.5pg/mgGL, 1.7±0.2pg/cm2人工血管（対ヘマシールド(R)1/5, ゼルシール(R)1/6）で, ヒト胸部大動脈置換においても推定最低発熱量以内にあり, 家兎を用いた発熱試験は陰性であった. 胸部大動脈埋め込み実験は雑犬6頭（10～15kg）の胸部下行大動脈をCL301（内径10mm, 長さ5cm）で置換し, 2時間, 7, 10日, 5, 8, 10週で摘出した（早期の2本はWD有孔度50ml）. 抗血栓性は従来のWDと相違なく, GL層への異物炎を認めなかった. GL層の消失は外面に比べ内面で有意に速く, 5週の遺残率は外層60％に対し内層は20％まで低下した. 両層を合わせた全遺残率は5週80.6％, 10週60.8％, 有効被覆率（人工血管接着部）は各々56.5％, 38.3％で, GL層の吸収は緩徐であるが, 人工血管から剥離, 細断されるため器質化は阻害されなかった. 10週ではクリンプの外側谷部になお遺残したが, 70％以上が新生内膜となった. 以上の基礎的検討によりCL301は, 最少発熱量以下のET含有量, 器質化を阻害しない最低5週間の有効被覆効果などの特長から胸部大動脈置換に有用な人工血管と考えられた. （日本胸部外科学会雑誌1995；43：1639－1645） |
