Abstract : |
当施設において急性心筋梗塞に伴う亜急性型左室自由壁破裂に対して外科治療を行った22例を対象にした. 手術術式は, 5例で破裂部位を直接閉鎖, 又はパッチ補填術を施行した. これらの術式では出血の制御に苦慮したため, 1988年からの11例は, 体外循環下に自己心膜パッチを梗塞部周囲の健常な心外膜に縫合して梗塞部位をカバーする術式を用いた(心膜パッチ縫着法). 1993年からの6例では, 非体外循環使用下にアロンアルファを用いて自己心膜パッチを梗塞部位に接着する方法を用いた(心膜パッチ接着法). 術後30日以内の死亡は8例, 晩期死亡は4例であった. 術後低心拍出症候群(LOS)が, 死亡原因の大部分を占めていた(75%). 手術直前までに内科的治療によりショックから離脱した症例は13例でLOS発生は3例であったが, ショックから離脱していない症例7例は6例でLOSが発生しており(p=0.007), 救命できた症例はなかった. 直接縫合閉鎖(梗塞切除法)では5例中2例, 心膜パッチ縫着法では11例中7例とLOS発症頻度は変わらないが, 心膜パッチ接着法6例中にはLOS発生例はなかった(p=0.04). 左室自由壁破裂発症後は, 大動脈内バルーンパンピング(IABP), 昇圧剤, 剣状突起下心嚢ドレナージ等の治療により早期に循環動態を改善させることが重要である. 手術術式として心膜パッチ接着法は, 術後のLOS発症頻度が少なく有用な治療法であると思われた. |