Abstract : |
長時間心保存法の開発を目的として, 酸素加心筋保護法の持続灌流心保存法におけるglucose, insulin, L-aspartate添加の心保存増強効果をラット摘出灌流心モデル(isolated working heart model)を用いて検討した. <方法>working灌流で保存前心拍出量を測定した後, 持続灌流心保存(Langendorff灌流, 灌流圧:30cmH2O)を行った. 保存後15分間のLangendorff灌流の後, 再びworking灌流で保存後心拍出量を測定した. 実験1:St.Thomas液の20℃又は4℃, 12時間保存において, L-aspartate(20mmol/L)の添加効果を検討した. 実験2:4℃St.Thomas液へのL-aspartateの添加, 20℃St.Thomas液へのglucoseとinsulinの添加, glucose, insulin, L-aspartateの添加の3群において, 24時間の心保存効果を比較検討した. <結果>実験1:心保存前後における心拍出量の百分率変化(%CO)は, 20℃ではL-aspartateの非添加群と添加群でそれぞれ57.7±3.8%と79.9±1.4%*(*p<0.05), 4℃ではそれぞれ74.4±2.2%と80.5±1.7%(NS)であった. 実験2:20℃, 24時間の心保存においては酸素加St.Thomas液にglucose, insulin, L-aspartateの添加が最も良好な回復を示し, %COは76.0±1.1%(L-aspartate非添加:64.2±2.2%)で有意に高値であった. <結論>酸素加St.Thomas液を用いた20℃の持続灌流心保存におけるglucose, insulin, L-aspartateの併用添加は, その保存能力を著しく改善せしめることが判明した. (日本胸部外科学会雑誌1996;44:1742-1748) |