| Abstract : |
自然気胸症例は急激に増加する傾向を示し, 著者の施設においても, その傾向は全く同様であるが, 自然気胸の原因となる気腫性肺嚢胞の破裂およびその成立機序については今だに明らかでない. 著者は自然気胸症例237例のうち, 188例に開胸手術を行い, 切除した気腫性肺嚢胞について, 光顕的組織学的検索を行うとともに透過性電顕, 走査型電顕を用いて超微構造についても検索し, 気腫性肺嚢胞の成立機序ならびに気胸の発生機序について考察しつぎの結果を得た. 光学顕微鏡レベルにおける気腫性肺嚢胞の組織学的所見として, 胸膜の肥厚, 胸膜直下のelastofibrosisを伴う瘢痕形成, 炭粉沈着, 肺胞食細胞の増加などが多くの症例で認められ, 特に肥厚した胸膜にはいわゆるMaβhoffのNeomembraneとこれに囲まれた気嚢形成とがみられ, 基底の肺実質とはpleura stomaによつて連絡している. 気腫性肺嚢胞周辺における肺実質の気腫性変化は軽度であり, 細気管支の病変は症例の半数でみとめられた. 透過型電顕所見としては, 胸膜下部の弾力線維の減少と膠原線維の増加, 特に嚢胞底部の肺胞中隔の弾力線維の消失, 平滑筋線維の断裂, B型肺胞壁細胞の増加, microvilliの増生, 肺胞食細胞への移行型の増加, 肺胞壁細胞の連絡性の欠除が認められた. 走査型電顕所見では, 気腫性肺嚢胞外面の中皮細胞が脱落, 消失し, 外弾力層の膠原線維化と瘢痕形成を認め, 線維束間の空隙と5〜10μの小孔形成がみられた. 嚢胞内面は粗造な線維性組織で成り立ち, 無数の空隙と小孔とをみとめる. 嚢胞底部においても多数の空隙と小孔が認められた. 嚢胞下部における肺胞腔の拡大は軽度でKohn孔の拡大も軽度で, 数もまばらであつた. 以上の組織学的ならびに超微構造所見から, 気腫性肺嚢胞の発生には胸膜直下の瘢痕形成と胸膜の肥厚, Neomembraneの形成が大きな役割りを演じており, その原因として炭粉沈着, 異物反応および透過型電顕所見から肺末梢部の炎症の存在が推測される. また, 気腫性嚢胞から気胸発生への関連性については, 超微構造的に気腫性肺嚢胞壁に10μ前後の空隙, 小孔が多数存在することから, 気腫性肺嚢胞と肺実質との連絡はもちろん, ある圧的関係においては, 気腫性肺嚢胞より胸膜腔へ空気が移行することも考えられる. このことは, 気胸が必ずしも肺胸膜の破綻なしに起りうるとするSattlerらの説の妥当性を示唆するものである. |